正月の餅、ことに雑煮は、日本人には欠かせない「習慣」ですが、老人ホームにおいても、高齢の入居者ほど特別な思い入れがあり、必須な「行事」でもあります。ただし、老人ホームの雑煮は、だしのとり方、餅の大小や形、焼くか煮るか、など各地の多様さを超えて、家庭では見られない準備と注意が要るといいます。
それは、高齢者は嚥下力(食べ物を上手に飲み込む力)が低下していることから、粘りを抑えた餅であったり、喉につまらないほどのサイコロステーキ(?)サイズであったりします。
そして、もう1つ絶対欠かせないのが、吸い込み口を消毒した「電気掃除機」を、 食堂の隅に用意することなのだとか。医者を呼んだり、救急車で病院へ搬送する前に、 現場で頼りになるのが、喉に詰まらせた餅を吸い上げ、吐き出させるための、この掃除機というわけです。
正月の餅や雑煮の地方色は、老人ホームの仕組みやサービスにも共通したものがあります。九州のある女性経営者によると「関西で始まったビジネスが成長し、東京でも成功したものなら、全国でも通用する」という法則があるのだとか。
本当のペットOKホームとは?
その典型が、最近大阪にオープンした「ペット(猫と犬、ただし中型犬まで)と一緒に最後まで暮らせる」老人ホームです。「ペットOK」の老人ホームは昔からありますが、他の入居者の迷惑にならないように、自己責任で散歩させる、共用部を歩かせない、鳴かせないなど、無理な?ルールが多く、ペットを看取ったあとにホームに入るという飼い主がほとんどでした。
一方、このホームは、広さ3~7平方メートルの4室全てが、猫や犬との共生仕様となっているばかりでなく、「ペットコンシェルジュ」(世話係)が常勤。散歩の代行、トリミング、シャンプーなどの設備や、スタッフも用意されています。24時間対応の動物病院も同じ敷地内にあり、人とペットの介護、看護、医療、看取りまで万全といいます。まさに、家族同等、あるいはそれ以上に大切なペットの世話も、入居者の老後も、ともに安心、快適なホームというわけです。
新たな年を迎えて、ペットと人の共生による「終の棲家」は、老人ホームのビジネスモデルになるような予感がしています。
*日刊シニア 2020年1月7日掲載