元気なうちに老人ホームに入る場合、何を基準に選ぶべきか?私は「充実の生き方・納得の行き方」を支えてくれる老人ホームだと考えています。
今回は「充実の行き方」を支えるホームについてお話しします。
老人ホームは福袋?
この数年、私のもとには「現在暮らす老人ホームのサービスや介護が納得できない」「不満なので、別のホームに移りたい」と言う電話が増えています。
以前から、私は「老人ホームは福袋を買うようなもの」と感じています。お金を払って開けてみなければ、中身がわからない。老人ホームも、本当の中身は契約し、高額の入居金を払い、住んでみなければ、サービスの内容、特に、「何が」よりも「どのように」提供されるか、がわからないもどかしさがあります。
さらに、介護の内容と丁寧さや、気配りを持って、尊厳やプライバシーが守られているか、は入居後、5年〜10年も後になってやっとわかると言う点で、福袋とは比較にならない深刻なものがあります。
入居後、要介護状態になってみて、失望と不満がわかると言うのは、なんと言う取り返しのつかない「悲劇」でしょうか。10年近くも経つと、資金も、体力も、気力も、ストレスに対応する忍耐力もなくなっている場合も多いのです。苦情やクレームの交渉も足元を見られて、思い通りにいかないのが現実です。
必ず現場を見学しましょう!
「終の棲家」を探すなら、必ず現地、現場に出向き説明を聞く事はもちろんですが、それ以上に掃除・挨拶を観察し、匂いをかぎ、空気を感じてください。入居者のご機嫌ぶりを確認し、スタッフの言葉遣い・表情から不満やストレス・不安を見抜きましょう。たとえ、経営者・施設長に会えなくても、現場は経営者の人柄、理念、ビジョン、考え方が写し出されている「鏡」なのです。
ホームページやパンフレットでは、実態の5〜10%しかわからないのが、老人ホームです。入居者が求めているのは、「自由、尊厳、プライバシー、個性」であり、経営者が、施設長が、それらを理解し、提供する姿勢があるかどうかです。それを知るには、経営責任者や現場の施設長に、次の4つの資質を感じられるかどうか、自問自答してみましょう。それは「情熱(熱意・真剣さ)」 「謙虚さ」 「誠実さ」 「正直さ」です。1つも感じられない、どれも強く感じられない場合は、静かに立ち去りましょう。後悔する事は無いはずです。
*日刊シニア 2020年9月1日 掲載